米国でのチップ額に対する疑問続く

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アメリカ人ですら戸惑ってる

今年の3月にCNNより紹介されたアメリカでのチップの払い方を紹介しました。

確かに新型コロナが蔓延した時、お店を開けて営業している従業員の方を慰労するために多めにチップを置くことはありました。ただ人がほとんど介在しない機会に、デフォルトでしかもサービスを受ける前にチップを決められた額を要求されるのにはずっと違和感を感じていました。実際は要求されているのではなく、促されているのですが支払いの際にプレッシャーはあります。

払う必要がない場面で要求される

それを同様に感じているアメリカ人が多いことがWSJに報告されていました。

Tipping at Self-Checkout Has Customers Crying ‘Emotional Blackmail’
(セルフレジでもチップ支払い? 消費者は感情に訴える脅迫と嘆く)

合理化の推進でパンデミック前もセルフレジやタブレット画面での支払いはありました。しかし他人との接触を制限するため、パンデミック中はさらに機械化が促進した感があります。しかし商品を購入するだけの場面でのチップの催促は、チップの存在に疑問を抱く顧客の増加につながっている、と記事に書かれています。

Tipping researchers and labor advocates say so-called tip creep is a way for employers to put the onus for employee pay onto consumers, rather than raising wages themselves. Companies say tips are an optional thanks for a job well done.(チップの研究者や労働者擁護団体は、チップ率が徐々に上昇する件について、雇用主が自らは賃金を上げずに消費者にその支払い義務を押しつける手段だと主張。一方の企業側は、チップは自由意志に基づいて仕事をよく遂行したことに対する感謝を示すものだとしている。

WSJ

自由意志だし、購入した商品に対価を払ってるんだから、チップを払わなくてもそれが普通に提供されるのは当たり前だと思いますけどね。

支払いシステムの仕様

在米の方ならすでに体験済みだと思いますが、米ブロック社の決済サービス「スクエア」が至るところで使われています。市場のシェアを確認するとサイトにより多少数字のばらつきがありますが、シェアが高いことは伺えます。

このシステムだけではないですが、このようなシステムを導入するとタブレットで支払いとなり、必ずチップを加えるかどうかの画面に遭遇します。

上の画面は元々の請求額が低いのでこのようになっていますが、合計額が高いときは堂々と18%、20%、25%のチップを要求してきます。最近は20%、25%、30%というのも珍しくないです。

システムもいい加減なもので、税金の部分まで含めて上でチップを要求する時もあるぐらいです。税金に対してチップを渡すつもりは毛頭ないので、毎回確認をしています。私の場合迷ったら大体「Custom」を押して一息入れるようにしています。

システムを導入したから、とチップ以外にもカードを利用した際の手数料を別に取る場所もあります。規模の小さい個人店ならまだ理解出来ますが、1回の食事に3桁ドル行くこともあるチェーン店で費用負担を顧客に転嫁している所がありました。解せないです。

ちなみにこのシステムの利用料は、というと、1回あたり総額の2.6%と10¢です。

POS System Pricing

一方でこのシステムで2022年10-12月期に処理されたチップは、元のWSJの記事によるとフルサービスの飲食店で前年同期比(つまりパンデミック真っ最中と比較)で17%増、クイックサービス(ファストフード)の飲食店で16%増だそうです。インフレ率だって約8%でしたから、システム導入そのものがチップ増に繋がっている、と考えたくなりますよね。

支払いシステムの影響

事実、WSJでそのことを指摘する記事が後日見受けられました。

Those iPad Screens Are Getting Us to Tip More—Way More

By tinkering with the default options and settings in point-of-sale screens, businesses can nudge their customers to give bigger tips, software designers and behavioral economists say. (POS画面のデフォルトのオプションや設定に手を加えることで、顧客により大きなチップを渡すように仕向けることができる。)

WSJ

さらに芳しくないデータが。

A 2017 Cornell University study found that larger suggested tip sizes increased how much customers tipped while having little impact on customer satisfaction, spending or retention.(2017年コーネル大学の研究によれば、提案するチップを大きくしても、顧客からのチップが増える一方で、顧客満足度、消費、顧客維持にはほとんど影響がない。)

WSJ

ムッとはしますが、自分でチップ額を変えればいい話だけなのかも知れません。消費者心理につけ込んでいる、という指摘もありました。

People have a strong tendency to stick to default options both because it is easier and because they assume the default is the social norm.(人はデフォルトの選択肢に固執する傾向が強く、その理由は(処理が)簡単かつ提示された値が社会的な常識であると考えるからです。)

WSJ

むしろ以下の話が一番自分で意識します。

The screens also trigger our desire to be perceived as generous, especially when asked to make a choice in front of the person receiving the tip and other customers standing in line.(チップを受け取る店員や列に並ぶ他のお客さんの前で選択を求められると、(自分は)気前がいいと思われたい欲求が起きる。)

WSJ

このような欲求というか、アメリカにおける日本人、アジア人の努めというか地位向上を考えると、多めに払わざるを得ないというのが実情です。特に私の場合田舎暮らしなので、働いている店員が学生で、私は相手を知らなくても向こうは私を知っている、ということが多々あるのがつらい所。

結論

WSJの記事の終わりにあるように「(パンデミック前の)普通の状態に戻り、チップの圧力に不満や経済的な負担を感じる場合は自分なりの基準を設け、チップを与える時に気まずさを感じたり心配したりしないようにすることが賢明」かと思います。

私は平気で「custom」押しますし、サービス・対応が酷いと思ったお店はどんなに美味しくても2度と行きません。代替の方法としては、現金を持ち込んで支払います。そうすればタッチパッドなど出てきませんし、必要ならば従来通りに去る時にテーブルにチップを置いていったり、店員に手渡したりすることが出来るからです。

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