米最高裁の銃と中絶に関して先週出た判断

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最高裁も政治も一緒で対極化

先週からアメリカは熱波に襲われ暑い日が続いています。ルイジアナは南部なので元からこの時期暑いのですが、気温が上がっているのにここまで雨が振らなかったのは珍しいと感じました。昨日だけは激しい雷雨があり道には大きな水たまりや所々で川が出来ましたが、むしろ気温が下がって快適に感じたぐらいです。

ガソリンの値段、小康

上がり続けると心配されたガソリンの値段ですが、先週も小康状態でした。全国の平均を今日調べてみると1ガロンで$4.897(ただしレギュラーガソリン)でした。

AAA Gas Prices

AAAより

ただし今週末は独立記念日(7月4日)が重なり、また3連休です。もしかしたら出かける人が増え需要が高くなるとガソリンの値段が上がるかもしれません。上昇している理由は以前紹介しましたので、興味ある方は参照下さい。昨日もNPRで記事が上がっていましたが、内容に目新しさは全くありませんでした。

How a massive refinery shortage is contributing to high gas prices

まだ十分に高いです。

米最高裁の判断

日本でもニュースなった最高裁の判決が2つありました。一つは銃規制に関するもの、もう一つは女性の中絶に関するものです。英語が一次ニュースですが、今回BBCの記事にリンクを貼っておきます。

詳細を知りたい方は判決文を直接お読み下さい。

銃に関する話

以前のブログでルイジアナでの銃保持の規定について紹介しました。

ルイジアナ州ではニューヨーク州同様、公共の場で銃を隠して携帯するには許可(a concealed handgun permit)が必要ですが、これを廃止する法案がすでに下院を通過し、さらに上院でも小委員会で可決され、全会での審議・投票を待つ状態です。

最高裁での争点は、ニューヨーク州法の「正当な理由」を証明しなければ銃を隠して携帯するライセンスが発行されないという事実が、合衆国憲法修正第2条と相反しているかどうか、でした。

In 6-3 ruling, court strikes down New York’s concealed-carry law

投票結果「6-3」矛盾している、という判断になり、同様な規制をしている他の州にも影響を与えるのではないかとされています。もっともBBCの記事でも書かれているように、連邦上院で両党からなる議員グループが銃器へのアクセスを制限する法案を提出し可決されているので、最終的にどういう形に落ち着くのかはどこの州でも状況を見守る必要があります。

中絶に関する話

人工中絶に関する元々の話は、ミシシッピ州のクリニックが州法で定めた「妊娠15週以降の中絶の禁止」が女性の人口中絶の権利を保証してきた連邦最高裁が定めた判例「ロー対ウェイド」判決に反しているという訴えに対し、「反していない」という判断を「6-3」という投票結果で下したことです。つまり米最高裁が1973年に下した判決を自ら覆したため、きわめて異例と受け止められ話題になっているのです。

この判断に対し、今日現在でも色々なところで抗議が殺到していることをニュースで知ることができます。

ルイジアナはどうか、というと日本語記事でも指摘されているように、最高裁の判断でもって一部の例外を除き中絶を禁止する法案が有効になりました。

上の記事によると中絶を行う州内の3つのクリニックがすぐに閉院しないといけないかは不明とのこと。また人工的な中絶出来る例外としては

  • 子宮外妊娠
  • 2人の医師が出産しても胎児が生存出来ないと判断した場合

のみです。中絶の罪を犯した人は最高で禁固10年、罰金10万ドルを課し、中絶を行った医師は最高15年の禁固刑と最高20万ドルの罰金を科せられる、と書いてあります。誰がチクるのは分かりませんが。

どうしても中絶しなければならない場合はどうするか?というと、他州に行かないといけません。記事によれば一番近いところでノースカロライナ州、ニューメキシコ州、イリノイ州やカンザス州になると推定しています。下図によると700マイルほど運転しないといけない、となっています。

www.nola.comより

「6-3」という数字

すぐに分かる通りどちらの判決も「6-3」で決定されています。想像に難くなく、6人と3人のグループは同一人物で構成されています。まずは現在の米最高裁判事のおさらいをしておきます。よく読むと誰に指名されたか明記されています。

Current Members

本来は司法は行政や立法と独立すべきものですが、アメリカの場合思想的に政治色が強く、判事の判断も法に沿ったというより信念に基づく判断が多いです。特に前トランプ政権で最高裁判事を3名も指名出来、彼らは政権が変わろうとも変更がなく、自分が決意するまで引退がないので、この指名の影響は十数年というスパンで続きます。民主党も「判事を増やし」て均衡を図ると言った飛び道具を考えてなくはないですが、両議会を圧倒していないので現状現実的ではないと感じます。

しかし法治国家と言いながら、法律を判断する人たちが自分の思想に近い政治家から選ばれるのですから、法の下に平等とは何なの?と思います。日本の最高裁判所裁判官は有権者投票による罷免制度がありますが、アメリカはあるのでしょうか。ちょっと調べたところ、問題行動を起こさない限り終身任期が保証され、起こしても連邦議会による弾劾裁判のみ(=政治的決定)みたいでなさそうです。大学教授の終身制度がなくされそうとしているのに、判事にその流れはないのでしょうか?

同じような思想を持っていても、法案によっては判断が分かれる方が法律家として自然かと思いますけどね。

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