ワクチン開発に必要なサルを守れ!先月アメリカ南部に寒波が襲ったときの身内話

a baby monkey
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ワクチン開発で絶対的に必要なサルの話

世界的にサル不足

私がいる大学のリサーチセンターでも研究用のサル(rhesus macaques)を繁殖させています。ルイジアナは暖かく繁殖に適した場所で、ここでも数的に見れば全米でも有数の施設です。先日ファイザーの研究者が書いてNatureに掲載された論文でも、開発に協力したためかうちの所長の名前が入っていました。

変異種も多く出回り、ワクチン開発にまだまだ多くの(研究用)サルが必要な状況ですが、長く続くパンデミックに加え中国から輸出が禁じられたため、絶対的な頭数の確保がアメリカでは困難になっています。10年ほど前からパンデミックに向け戦略的にサルを確保すべき、と進言はあったようですが、予算が下りずむしろ減っていた状況でした。

ねずみではないので急に増やせと言われても増えません。ねずみだったら3週間で子孫が生まれますが、サルは5ヶ月半から6ヶ月赤ちゃんはお腹の中にいます。大人になる時間も人間より3倍ほど早いとは言え数年かかります。つまり必要なのは「今」ですが、今すぐ増やし始めても足りないという状況は中国から輸出が再開されない限り数年は解消されないのです。

アメリカ南部へ記録的な寒波という挑戦状

先月バレンタインあたりからアメリカ南部に記録的な寒波が襲った、ということを紹介しました。

テキサス州での被害がもっとも酷かったと思いますが、ここルイジアナでも想定外の寒さでした。気候が穏やかなルイジアナでは何日も気温が氷点下、特に夜間に-10℃以下に達するなんてありえません。サルたちは外で飼育されているので、今回の異常低温は獣医や動物施設スタッフにとってもっとも厳しい挑戦となりました。ただでさえパンデミックで研究用サルが必要なのに、寒波でその数を減らすことは出来ません。

実は今日、大学のIACUCのミーティングがあり私も参加しましたが、その時の対応、結果が報告されました。スタッフは多くのことを想定して念入りに準備をし、寒くても施設に頻繁に立ち寄り、暖を取れるよう動物たちにできる限りの対応をしたそうです。残念ながら機密事項があるので詳細はここで書けませんが、幸運にも寒波による損出は最低限に抑えることができたようです。報告してくれた方は「正直ものすごくつらく、スタッフは疲労困憊だった」と言っていましたが、ミーティング参加者からは自然と拍手がZoom越しで起きました。

目立たないことですが、田舎の大学の研究所でもこんなことがあったんだ、とワクチン接種時に思い出していただければ幸いです。彼らの努力が少し報われると思います。

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