学生から依頼される推薦状の実態、中身についてー大学教員からの視点から

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年明けから推薦状執筆の依頼が学生から多数あり、少なくない時間をかけては提出しています。今回はその話をちょっと。

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推薦状を出す側から推薦状のもらい方を考える

推薦状の季節

日本で私が大学院進学や就職活動の際、求められたことはありませんでしたが、こちらでは次のステップに移るにあたり推薦状(Letter of recommendation)が重要な書類となります。候補者の照会先として名前を掲載するだけなら「載せてもいいよ」と答えるだけでいいのですが、推薦状を書くとなると一人あたりにそれなりの時間をかけます。適当な推薦状を書くと何かあったときに自分の信用にも傷がつきますから、いい加減なことは書けません。

日本だと一度でも社会を経験すれば常識なのですが、学生の時はなかなかわからないので、今後もらう人にお願いというか助言を。1つ目、締切まで余裕を持って依頼して下さい。時間がないと結局は適当な推薦状になります。2つ目、大学名だけでなく、希望する学部・学科の名前をあらかじめて知らせて下さい。教員がいちいち調べるのは面倒ですし、もし学部名や学科名を間違えても責任は取れません。実は先日、大学院の応募願書を評価してくれ、という依頼もあり行いましたが、エッセイや推薦状に間違った学部名が書かれていました。恐らく他の大学院が第一志望で、うちも含めて受かりそうなところにもおまけで出したんだとと思います。その気持ちはわかりますが、やはり見る方としては少しの配慮もないとやる気が下がります。ましてやその願書内容がボーダーラインにあったら、私の判断はどちらに転んだかご想像下さい。圧倒的なレジュメや成績でない限り、くだらないところで減点材料を作らないことは大事なことです。3つ目、提出する学部・学科の特徴を掴んだ上で、自分が教員に特に書いて欲しい、強調して欲しいことを前もって教えて下さい。教員側が出願先の学部のHPに行き、相手が欲しがりそうな人材の特徴を調べた上で推薦状を書くのはベストですが、時間の制約上よほどのことがない限りそこまで出来ません(しません)。いい推薦状を書いてもらいたかったら、依頼する側が下調べして、そのことを書く人に伝える方が事はスムーズに進みます。

推薦状出しても推薦度はまちまち

ちなみに生徒への推薦状を書く時、同僚ともよく話すのですが大体3段階ぐらい(書くことを断る場合を入れれば4段階)あります。一番低いのはただ当たり障りなく生徒を紹介するだけのもの、二番目は成績が良かったり、よく努力したりして特筆する事項があるもの、三番目は特筆事項だけでなく、リサーチや課外活動を通じて本人の良さを知っており、相手に是が非でも採用することを願うようなもの、です。今日書いて送ったものは二番目と三番目の間ぐらいのものでしたが、それでも定型文以外のところで候補者特有のエピソードを入れたり、送り先の大学院に応じて担当者に目にとまるような話を入れたりしました。大変とは言え仕事の一部ですし、学生の将来を決めかねないので手を抜かずにやっています。雇用主からは別に評価はされないですけどね(笑)。

推薦状を依頼する前に確認すること

今後留学されて卒業間際に推薦状が必要になった場合、ただ推薦状をお願いするだけでなく「強い推薦状(strong recommendation)」を「快く(Are you willing to~)」書いてもらえますか、と聞くのが重要です。必要数が足りない場合は別ですが、躊躇されたら空気を察し「じゃ、いいです。ご検討ありがとうございました」と言って引き下がる決断もときには必要とお考え下さい。今、新たな教員を選ぶ委員(注:募集内容によって委員は毎回変わる)をしていますが、一通でも疑問符がつくようなことが書いてあると、その評価をひっくり返すのは並大抵なことではないことを痛感しています。

ちなみにですが私の場合、ただ授業を担当した学部生に推薦状を書くのは、その生徒が”A”を取った時のみです。悲しいかな学部生のクラス・サイズは大きいことが多く、何度もオフィスに来て質問やら話でもしない限り、生徒一人ひとりを知る機会がないのです。そこで何か書けるとしたら「頑張ってAを取りました」ということぐらいしかありません。一番前に座っていて熱心にノートを取っていた、と言われても大変申し訳ないのですが、顔と名前が一致するのは実際に会話が何度もあったときです。成績がA以外の生徒が来た場合、「書けない」か「弱い推薦状しか書けない」と正直に伝え、できれば他の人からもらった方がいいよ、と言います。これがお互いのため、と思っていて、実際「それでも書いて」と依頼されたことはありません。

何だか年寄りじみたブログになりましたが、推薦状を出す側の実態を知ってもらいたいと思い、書き記しました。どなたかのご参考になれば。

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