EP14. 留学11日目、シラバスを読みこむ

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まとめ:シラバスは教員・生徒間の授業における契約書、面倒でもシラバスは読もう

シラバスって何ですか?

授業開始1週間以内にやるべきこと

授業開始後、1週間はペナルティーなく授業を自由に変更できる、と紹介しました。教員との相性もありますが、一番重要なのはすべてのシラバスを読み、その学期登録した科目をすべて履修しても大丈夫か、確認することは非常に重要です。

私も今では授業登録の前に生徒にアドバイジングしますが、生徒が積極的に自分の状況を伝えてこない限り、カリキュラムに沿って最短距離で卒業出来るように授業を取るように勧めるだけです。参照する大学のウェブサイトで成績不良の「フラグ」が立っていれば別ですが、それ以外は勧める科目ごとに必須の科目を規定の成績以上で履修していることを確認するぐらいです。使える時間の都合上もあり、各生徒がその学期にどんな事情があるか、各科目がその生徒にとって負担が高いか少ないかまではなかなか考慮できないのが実情です。従って履修科目の最終調整は生徒自身が行うものであり、最終確認(アドバイジングでお互い「理解しました」と署名もするので)をする責任は生徒にある、と考えて下さい。従って「どんな授業をするか」「どれだけ宿題やテストがあって、生徒はどんな対応しないといけないか」が書いてあるシラバスの熟読は非常に大切です。

注:アメリカは言ったもの勝ち国家なので、アドバイスが的確でなく実力以上のクラスを取らされて成績が下がり、結果、希望の進路に進めなかった、最短で卒業できなかった、専攻の変更を強いられた、奨学金が外された、といった(親をも巻き込んだ)苦情や訴訟沙汰がありますが、大学側も馬鹿ではないので(教員である私も含めて)万全な準備と対策をしています。留学生はこんな状態にならないよう、多少出来の悪いアドバイザーでも自分でしっかり対応することが時間とお金の節約になります。

シラバスに何が書いてあるか

今や日本の大学でも履修の際に配布されるようになったと思いますが、要は各科目の「授業計画書」です。アメリカの大学のシラバスを紹介するにあたり、恐れ多いですが私がクラスで配布したもの一部変更して(個人情報を隠して)利用します。ちなみにシラバスはテンプレートがあり、それに準じて書くように通達されています。またシラバスの内容は現在の大学だとSACS(Southern Association of Colleges and Schools、南部の大学を対象に単位・学位を授与するための基準を満たしているかなどを評価して認定する機関)の認証を受ける際に審査を受けているので、大学全体としてもある程度標準化されているはずです。したがって多少の違いはあれ、どこの大学で授業を受けても、シラバスには同様なことが書かれていると考えて大丈夫です。

一段落目:クラス名、開講日、担当教員名、オフィス・アワーなど

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まず1ページの最初には科目名や開講日、担当教員の情報が書かれています。アメリカの大学の場合、学科の後の数字が500番台(もしくは5000番台)以上は大学院生向けで、学部生は400番台(もしくは4000番台)以下です。私、授業の開講日・時間を書き忘れていること今、気が付きました。新型コロナウイルスが蔓延していたので、Zoomでの連絡先も記載されているのが、この時期ならではですが、通常に戻ってもこのような形態でオフィスアワーを設定することが続くかも知れません。

二段落目:クラスの概略と必須・選択の教科書

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次の段落では授業の概略、目的、そして必要な教科書について説明してあります。教科書購入が必須かどうかは必ず確認して下さい。特に古いバージョンの教科書もOKの場合、教科書購入費用を抑えられます。私の場合、授業のパワポスライドをすべて配布していること、予習・復習用の読む課題はレビュー論文を使ったので、教科書の購入は生徒に任せました。授業のパワポがその教科書に沿って作成されているので、じっくり内容を吟味したい場合はその教科書を読んでね、ということになっています。授業の目的(Course Objective)ですが、教員が履修後生徒にどんなことを期待しているかが記述されています。私の記述はよろしくなく、上から指摘が入り今後訂正しないといけません。understandとかbe familiar withだとyes、noなど評価を数値化出来ず曖昧で不適当、とのことです。確かにそうですが、基準を曖昧にしておいた方が生徒にとっては都合がいいことも少なくない(例:全体的に出来が悪いときに達成基準を柔軟に上げ下げ出来る)のですけどね。

三段落目:授業を履修する上で前提となるコンピュータのハード・ソフトの知識

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この辺りから教員により書く項目の順番がバラツキはじめるかと思います。私の場合、授業で必要とする機器や知識、特にPCを持っていて使いこなせることを前提としています。最近はスマホが発達してほとんどのことが出来、逆にPCを持っていないという生徒に遭遇します。私にとっては要求する成果物が提出されればどんな機器を使ってもいいのですが、「スマホに対応するアプリがないから出来ない」、「PCソフトの使い方を知らない」という言い訳は受け付けませんよ、と前もって伝えています。またPCがないから大学のコンピュータ・ラボでしかPCに触れない、課題提出前にコンピュータ・ラボが開いていなかったから締め切りに間に合わなかった、という言い訳も受け付けません、とも伝えています。ここに書かれている環境を準備し課題をこなすのは「生徒側」の責任です、という意味です。アメリカの大学だと必要なソフトの使い方を説明、練習する授業が(ご丁寧にも)カリキュラムに組み込まれていますが、日本の大学経由で直接アメリカ大学院に入られた方は知らないこともありえるので、ご注意下さい。

四段落目:成績のつけ方、テストや宿題、プレゼンの回数

grading

生徒にとって実際はここが一番重要かも知れません。成績のつけ方は教員が決定出来ず、大学側のポリシーに従います。現在私が在籍する大学は10点刻みのA, B, C, D, Fの評価ですが、私が学生として在籍した大学だとこれに+やーがつき(例:A-、B+など)、もっと細かく成績がつけられていました。これを見て気づいて欲しいことは、というと

  • 試験は2回
  • 期末試験の範囲は学期中習ったこと全部(Cumulative)
  • 学期中に3回プレゼンする必要あり
  • 授業以外に4回提出物がある

ということです。普通これに「term paper(1学期をかけて書くリサーチ・ペーパー)」をつけるのですが、何度か学生側からのフィードバックで「やる内容が多すぎる」と批評を頂いたので、対応すべくこの時は負担を減らした記憶があります。この後に1つ1つの試験、プレゼン、提出物について説明がありますが、長くなりすぎるので省略します。一番下にこのシラバス全体をpdfで閲覧出来るようにしておくので、興味がある方がご覧下さい。

五段落目:学生と教員との間の決まりごと

policy

この部分の記述は私の場合どのクラスも同じです。大学側から提供されているものに、自分が伝えたいことを加えているだけで、科目によって変わるものはないからです。大学院生なんだから自分で勉強してね、授業中は携帯切るか、サイレント・モードにしてね、カンニングはやめようね、と言った当たり前のことを書いています。最後の文章はアメリカでよく強調されているのですが、もし他の学生と同様な環境で学んだり、試験を受けたりすると不利益がある場合は、医師の診断のもと最大限考慮・配慮します、というものです。これは重要で必要なことですが、正直乱用されているのでは?という勘ぐりたくなる例もなくはないです。留学生の場合、言葉は医師に診断を受ける障害ではないですが、留学してまもない頃は試験時間を延長して下さい、と申し出れば受け入れられるはずです。

六段落目:スケジュール

schedule

私の場合、予定するスケジュールを一番最後に入れておきます。なぜならば、進行具合で学期中に頻繁に変更しないといけないからです。本来ならば各トピックで教科書の「章」の情報も入れておけば生徒にはわかりやすいですが、旧版、最新版で「章」の番号が変わっていたのであえて入れませんでした。ただこれがあればざっくり授業の進み具合がわかり、いつ試験や提出物の締め切りがあるか、視覚的に生徒さんに伝えられたかなと思っています。

以上簡単ながら私が以前授業で配布したものを用いて、シラバスについて説明しました。米大学で配られるシラバスの内容と理解、そして初めての学期でその授業を履修し続けるかどうかの参考になれば、と思っています。

最後にシラバス文書のリンク先を下に貼っておきます。全体を眺めたいときにお使い下さい。

KNES 507 Bioenergetics

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