まとめ：ビザに関する情報は1次情報を英語で読むくせをつけよう。
オンライン授業だけなら日本で受けてもいいですか？
2020年度秋学期に留学生はアメリカに滞在可能か？
公的サイトで経過確認
アメリカに留学している学生の滞在条件がコロコロ変わり、当該の学生さんが混乱に陥っているのは既報の通りです。日本では7月頭に発表された「大学が秋学期オンライン授業だけに移行した場合、留学生はアメリカに引き続き滞在出来ない」だけがニュースになっていましたが、実は前振りがあります。3月に大統領が非常事態宣言を出した際、US Immigration and Custom Enforcement (通称ICE)も留学生に対してガイドラインの文章を出していました。
COVID-19: Guidance for SEVP Stakeholders
詳細は上記文書を確認していただきたいですが、要約すると3月の段階でアメリカに入国し正規の授業を取っている場合は、大学が授業を途中で中止したりオンラインに移行したとしても、アメリカに滞在するステイタスは有効のままであると伝えていました。ちなみに知らない方に伝えておくと大学生や大学院生の場合ビザはF-1ですが、これが必要なのはアメリカに入国する時だけです。合法的に滞在することを許可するのは大学側から発行されるI-20です。留学後でもこのことを理解していない方が非常に多いので、頭に入れておいてください。
F1ビザとI-20という書類
どういうことかというとこれらの発行場所は違いますし、有効期限も違います。F-1は学部正規留学なら日本の場合通常5年、I-20は4年です。例えばですが、アメリカ滞在中F-1ビザが切れても、I-20が有効なら滞在は合法です。ただし何かの理由で一度国外に出た場合、F-1が切れているとI-20が有効でもアメリカに入国出来ません。逆にF-1ビザがまだ有効でもI-20が切れた場合、入国審査でI-20が切れていることがわかるのでアメリカ入国出来ません。またF-1およびI-20が有効でもアメリカ出国前に大学の留学生オフィスで署名をもらっていないと（正確に言うとI-20発行時の署名は6か月有効なので、その有効期間内なら必要ないです）、たとえ前回署名をもらったとしても入国でひっかかります。
留学生は秋学期前に母国に帰国命令？
話を戻しましょう。3月の時点ではアメリカ国内に勉強のためすでに滞在していれば問題ない、ということでした。アメリカの場合、夏学期に授業を取るのは必須でないので、春学期に卒業しておらず秋も授業を取るのなら、I-20により夏に引き続きアメリカに滞在するのは合法です。ところが7月の発表で3月に発表したガイドラインを覆し、秋学期も同様の場合は認めない、国に帰れという通達が出たのでした。
3月の文書を読めばわかりますが、一時的な処置とは言え、その決定がいつまで有効か書かれていません。しばらく何も発表がなくなぁなぁになっていた所に7月頭、秋学期まで1か月あるかないかの直前になって猶予期間を置かずに急に認めない、という話がきたわけです。労働ビザであるH-1もそうですが、現政権になってもすでにアメリカ国内にいる人々に新しい法律を適用することは今までなかった（違法移民は別）ので、かなり驚きました。その決定が良い悪いだけでなく、今までの経緯との整合性も保てていません。
留学生滞在に関する結末はどうなった？
その後結果的にトップ層の大学が訴訟を起こし、政府はその通達を取りやめて収拾しました。そこで7月24日、あらためてICEは通達を出したのでした。
ICE continues March guidance for fall school term
新たに留学しようとする学生の入国を拒否するとはけしらかん、という論調を見かけましたが、これは3月のガイドラインを踏襲し今までのビザ発行規程（オンライン授業だけの大学にF-1は発行しない）にも準じますから、私的には納得できます。ただ可哀そうだなと思ったことはこの決定が遅く、F-1、I-20も発行されてアメリカまで航空券を購入して来たのに、入国審査で拒否されてそのまま帰国させられた学生さんたちです。これはもっと早くに通達を出すべきで、連邦政府、関連する組織、部署は責められるべきです。
以上、2020年7月に起きた米国留学生に関する入国・滞在ステイタスのどたばた対応の話でした。
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