データから見る銃社会アメリカ
想像に難くないですが、アメリカでの銃乱射事件の数は今年、一番悪いペースのようです。
2023 on pace to have highest number of mass shootings in US history
記事によると今年これまで起きた総数は580で、このペースで行くと最悪と思われた以下の年を上回りそうだとのこと。単純計算してみると580/10*12=696です。確かに。ただ実際に上回るかどうかは誤差の範囲で、むしろ2021年と同様と言ったほうが良いかも知れません。
- 2020年:610件
- 2021年:690件
- 2022年:647件
銃乱射の定義
そもそも銃乱射事件(mass shooting)として数えられる定義は何なんでしょうか?調べてみました。
What is considered a mass shooting?
唯一の定義というのは存在しないようです。2013年にThe Department of Justice(司法省?)が分析で使った定義だと
“any incident in which at least four people are murdered with a gun.”
The Department of Justice
(少なくとも4人が銃で殺害された事件)
だそうです。他の定義だと、
The Gun Violence Archive, a nonprofit that defines a mass shooting as an event with a “minimum of four victims shot, either injured or killed, not including any shooter who may also have been killed or injured in the incident.”
Gun Violence Archive
(銃乱射事件アーカイブという非営利団体は、銃乱射事件を “最低4人が撃たれ、負傷または死亡した場合の事件(その事件で死傷した可能性のある犯人は含まれない)”と定義している。)
となっています。実際ロイターやCNN、WSJといったメディアは後者の定義を使って報道しているようです。なるほど。
ただ銃を乱射する事件が起きてもmass shootingとしてカウントしない場合がある、ということを認識しないといけません。
実際のデータ(銃乱射件数)
実際どこで、どのくらいの被害があるのでしょうか?調べてみると、以下のサイトに詳細なデータがありました。
Gun Violence Archiveのデータなので、確かに死傷者が4人以上の場合が掲載されています。Interactive mapを利用して、南部でもどこが多いか調べてみました。
あれ、うちのあたり意外に少なくないですかね?Lafayetteの右側に緑の円に4と書いてありますが?
少し拡大してみたら、勘違いであることが判明しました。うちらの地域はその左側、黄色の11に含まれるようです。
上図ではBeaumontの右に黄色い円で11と書いてあるのに、下図だとBeaumont(2)、Lake Charles(2)、Alexandria(3)、Lafayette(3)を足しても10で11にならないですが、どうゆうことなんでしょう?逆に上図でBaton RougeーNew Orleansは緑で4となっているのに、下図だとニューオリンズだけで緑の7と読めます。どうやって足し算をしたのか、不明です。
確かにわかることは大都市の方が絶対数が多く、地方都市は少なめ、ということでしょうか。それとも人口あたりにしたら、発生数はそれほど変わらないかも知れません。絶対数に基づき色によって各街が安全か安全でないかを視覚的に表示するのはmisleadingな気がします。
銃による死者数(米国)
結果としてどういうことが起きているか、というと2021年度までのデータですが、
となっています。赤い太い線に注目下さい。2000年度前後に減っていたのが、それ以降増加する傾向(特に2015年以降)が止まらないように見えます。自殺も増えていますが、傾きの変化を見ると死者総数が殺人による死者数と強く相関しているように見えます。
- Total firearm deaths: 銃による死者総数
- Suicide:(銃による)自殺者
- Homicide:(銃による)殺人
- Legal Intervention/Operations of War:(警察など)法に基づき銃で犠牲になった人、もしくは戦争による死者
- Unintentional:意図しない(銃による)死者
銃による死者数(日本)
見るまでもないですが、日本の場合を調べてみます。日本語のデータだと以下のサイトがありました。
2022年度のデータは?というと、以下のページにたどり着きました。英語で登録してお金を払わないと一瞬しか閲覧出来ないページです。
Number of fatalities resulting from gun shooting incidents in Japan from 2013 to 2022
2022年に銃により亡くなった方は4人、となっていました。
この図も2017年から2021年の数字は上の表と一致していることが分かります。参考までに平成時代だともう少し死傷者が出た時がありました。2005年から2014年のデータです。
図表-7 銃器発砲事件の発生状況と死傷者数の推移(平成17~26年)
平成19年(2007年)が21人(一般人の死者数だと10人)で最大となっています。日本も大変な年もあったようですが、それでも毎年数万人の死者が出るアメリカとは大違いです。
世界の状況と比較
公正を期すために日米だけでなく、他の国との比較を調べました。
Firearm Deaths in the World’s Largest Economies
人口10万人あたりの銃による死者の割合ですが、アメリカが桁違いに高いことが分かります。
まとめ
ざっくりの計算ですが上の表を元にすると、銃により亡くなる可能性は、、、
- アメリカだと日本の377倍
- フランスだと日本の50倍
- インドだと日本の32倍
- ドイツだと日本の14倍
- イギリスだと日本の5倍
となります。
この数字を見ていると自分でもこんな国に24年近くもよく住んでいるな、と思います。
在米の皆さん、特にご安全に。日本から海外に旅行される方もご安全に。
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