アメリカ連邦議会で未曾有の出来事
日本だと朝起きてニュースを見たらアメリカ議会の状況に驚いたかと思います。私は昨日からジョージア州上院議員の決選投票の行方がどうなるだろう?と思いニュースを見ていたのですが、昼過ぎからトンデモナイことが国会で起きました。すべてを正しく把握しているとは思えませんが、これらの経緯について私なりの理解を書き留めておきます。
前代未聞の事件が起きるまでの流れ
スーパー・チューズデー(大統領選挙)
さすがに皆さんもご存知だと思います。当日の投票のみならず郵便投票が多数あったため開票作業にかなり時間がかかったものの、最終的にバイデン候補が306人の選挙人を獲得し、232人だったトランプ候補に勝ちました。投票数で言えば81,283,485票(51.4%、バイデン)に対し74,223,744票(46.9%、トランプ)でした。以下の図はAPより抜粋。
トランプ共和党候補による再集計・裁判要求
選挙当日の即日開票では激戦地区で勝っていたのに、多くの郵便投票(相当数がバイデン票)で結果をひっくり返されたトランプ候補。その後郵便投票の取り扱いそして開票作業に問題があったとして、その陣営や共和党議員が各州で裁判を起こします。州によっては再び集計が行われ、訴状を受け取りました。しかし集計に問題は見つからず結果も覆らず、訴訟に関してはまだ審議中のものもあるようですが基本すべて認められていません。これらの結果は以下のページによくまとまっています。
- Post-election lawsuits related to the 2020 United States presidential election(ウィキペディア)
- Election 2020: A look at Trump campaign election lawsuits and where they stand(ABCニュース)
12/14、選挙人による投票
大統領選挙の結果をもとに、全米50州とコロンビア特別区(首都ワシントン)で選定された選挙人がこの日に投票をしました。選挙人制度については、以下のサイトによく記述されています。
【米大統領選2020】 大統領を直接選ぶ「選挙人」とはどういう人か(BBC)
ここであらためてバイデン候補が306票を獲得し、当選が正式に確定しました。ここでも選定された選挙人が州の結果とは異なる投票をするよう、共和党候補の現職大統領が圧力をかけたこともありました。事実2016年には州の結果と異なる投票がありましたが、2020年度は上に書いたように大統領選挙の結果通りになりました。それでも現大統領は諦めず、紳士的な敗北宣言をしません。
上下両院合同本会議で結果を承認させない企み
不正があった、というものの確固たる根拠がなく選挙結果が覆ったところはありません。焦ったのかジョージア州務長官に現職大統領が直接電話をし、その州の選挙の結果が覆るよう「票を探せ」とも指示しますが、良心のもとにその長官は断りました。
しかし共和党でも彼のシンパが土壇場でも必死に訴えます。有名どころではミズーリ州のホーリー上院議員(最年少議員)やテキサス州のクルーズ上院議員の訴えです。これに共鳴し賛同した共和党の上下院議員がいる一方で、選挙に不正はなく終わったと認める同党議員もいました。
ただ彼らが異議を申し立てても審議されて時間を稼ぐだけで、選挙結果が覆る見込みはありません。そもそも上下両院合同本会議での選挙人投票の集計・結果承認は儀式的なものです。そこで共和党候補の現職大統領は議長を務める盟友であるはずのペンス副大統領に「勝利認定を阻止するよう」圧力をかけます。しかしペンス副大統領は合衆国憲法にそのような権限はないとし、要求を断りました。
1/6午前、上下両院合同本会議前
そして今日、連邦議会議事堂にて上下両院合同本会議が行われ、選挙人投票の形式的な集計、結果の承認を予定通り行うはずでした。どのようにして声を掛け合ったか不明ですが(後日注:少なくとも現職大統領が集まるよう呼び掛けていたようです、下のツイート参照)、ホワイトハウス近くに「Save America(アメリカを救え)」と言うスローガンのもとに多くの現職大統領の支持者が集まりました。
Peter Navarro releases 36-page report alleging election fraud ‘more than sufficient’ to swing victory to Trump https://t.co/D8KrMHnFdK. A great report by Peter. Statistically impossible to have lost the 2020 Election. Big protest in D.C. on January 6th. Be there, will be wild!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) December 19, 2020
I will be speaking at the SAVE AMERICA RALLY tomorrow on the Ellipse at 11AM Eastern. Arrive early — doors open at 7AM Eastern. BIG CROWDS! pic.twitter.com/k4blXESc0c
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) January 5, 2021
すると彼らを煽るように(注:私の私感です)現職大統領が出てきて予告通り演説をしたのでした。「マイク(ペンス副大統領)は正しいことをすることを望む。」「我々は決して敗北を認めない」と。以下の動画で決起集会のすべてを閲覧出来ますが、現職大統領が出てきて演説するくだりは3:30:00付近で、1時間ほどしゃべります。演説後YMCAの音楽に合わせてポーズをとったり、いつもの謎の踊りを披露したりしています。満足そうです。
「クローズド・キャプション(CC)」をオンにすると字幕が出ます。またもう少し見やすく短い動画は以下のサイトなどで閲覧出来ます。
“We will never concede”: Trump rallies supporters with barrage of false claims
1/6午後、合同本会議開始、暴徒が突入
その後大多数の支持者が連邦議会議事堂に向かいました。ここで平和的にデモをするだけだったのか、初めから侵入し会議進行を阻止する手はずだったかはわかりません。ただ警備の人を薬品で煙に巻いて窓から侵入した、などプロの仕業と思える行為も報道されているので、実力行使でバイデン大統領候補の当選承認を阻止もしくは遅らせて少しでも裁判の結果を待つような計画があった感があります。現職大統領陣営がこれに加担している可能性もなきにしもあらずです。これらは後日、捜査の上で明らかになるでしょう。
その後警備隊が連邦議会議事堂を制圧し、午後6時から夜間外出禁止令が出ました。一方で上下両院合同本会議は安全な別な場所で再開され、選挙人投票の結果が承認する運びになっています。ともあれテレビで見ていた出来事は信じられないような光景でした。
なお今回のブログは客観的に書いているつもりですが、共和党の現職大統領支持者から見れば全く違う見え方、捉え方があるとは理解します。ことの経緯の解釈についてはご自分で判断願います。
P.S. 大統領選の大きな流れは以下のサイトに詳しく記述されていました。ご参考まで。
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