この時期渡印したオーストラリアのクリケット選手の行方?
簡単なクリケットのプロリーグの紹介
ポスドクの時の上司がインド人だったのでよく知っているのですが、クリケットはその国で非常に人気のあるスポーツです。インドでまともに稼げる唯一のプロスポーツ、と言っても過言ではないと言っていました。
クリケットは発祥柄、主にイギリス連邦の国(Commonwealth of Nations)で盛んですが、私が知る限り最大のプロリーグはインドのインディアン・プレミアリーグ(IPL)だと思っています。
このリーグには地元のインド人選手だけではなく、海外のトップ選手も多く参加しているとのこと。上のWikiにも書いてありますが、IPLの雇用期間が7週間と短いので、この期間にインドでプレーして、後は自国でプレーするものと推測します。
IPL参加のためオーストラリア選手が今年も渡印
一方で今年の4月から今日までの期間、世界でもっとも新型コロナウイルスが猛威を奮っている国はインドです。連日ニュースにもその惨状が伝えられているので、ここで紹介することは割愛します。
ただそのような中でもIPLが今年開催される予定でしたので、オーストラリア代表選手が防具服フル装備で飛行機に乗り、インドに渡る様子を先月末ツイッターに投稿しました。
Safety first: David Warner and Kane Williamson in full PPE as the Sunrisers head to Delhi #IPL2021
📷: @davidwarner31 pic.twitter.com/Y52kMUsD16
— cricket.com.au (@cricketcomau) April 27, 2021
もちろんプロとしてプレーするため危険を顧みずにインドに渡ったわけです。しかし上の記事をよく読むとわかるのですが、「プレー後、自国に戻る手段は自分で用意せよ」と首相が警告しています。オーストラリアは世界でも新型コロナ対策・制限に厳しい所で、少なくとも5月15日までは民間機のインド往復の停止を決定しました。それでも彼らはチャーター便を手配して帰る希望を持っていました。
豪政府がインドから帰国者への罰則を制定
民間機のインド往復は禁止されたものの、抜け道がありました。この法律が制定した後も感染が拡大するインドからドーハ経由でIPLに参加していたクリケットのスター選手が帰国し、それ以外でもシンガポールやマレーシアのクアラルンプール経由で帰国出来ることが判明したのです。
これに業を煮やしたオーストラリア政府は5月1日、その経路で(自国民でも)帰国出来ないようにしただけでなく、5月15日より前にインドから入国した者に5年以下の懲役または37,000ポンド(約560万円)以下の罰金を科すことを決定しました。
この時点で30人を超える選手やコーチ、解説者などがインドに滞在していると伝えられました。それ以外でも9000人程度のオーストラリア人がインドに在留し帰国を希望しているようです。しかしオーストラリアの政府のた対応は厳しいものですね。
頼みのIPLが中断
それでも仕事をすることでお金をもらえればいいですが、プロ選手らにとって悲劇が襲います。IPLは4月9日から始まり今月2日まではプレーしていたものの、本日新型コロナウイルス危機のため無期限中断とすることが発表されたのです。
自国の選手は自分の家に戻ればすみます。イギリスの選手はすぐに飛行機に飛び乗り帰国出来ているようです(ただし10日の隔離期間は義務)。
オーストラリア選手は何処へ?
ではオーストラリアの方々はどうなるのでしょうか?まだ確約された帰国の手段はないようですが、現時点ではモルディブに一度飛んで避難し、オーストラリアへの入国手段を探る、と噂されています。
- Australian cricketers in limbo after IPL suspended amid India’s deepening Covid crisis
- Australian IPL players and support staff might fly off to Maldives in bid to get home
モルディブはインドの富裕層が感染拡大する母国からチャーター便で抜け出して行く滞在先の一つとしてニュースになっていました。
モルディブが魅力的なのはインドから近くて休日に過ごすにはいい場所だけでなく、モルディブ国民のワクチン接種が完了次第、来訪者にワクチン接種をするというのです。下の記事が出た4月26日現在でモルディブでは90%のフロントラインワーカーが、そして国民全体で50%が少なくとも接種を完了していると伝えられています。
まるで天国のような話ですが、やっぱりオチがあります。モルディブ観光省は、インド人観光客が「有人島のホテルやゲストハウス」に宿泊することを禁止しました。つまり彼らが滞在出来る場所はモルディブの独立したもしくはプライベート・アイランドにある最も高価なリゾートだけです。
インド人ではないですが、もしこの方策がインドから避難するオーストラリア人選手たちに適用されても、彼らはお金が無い訳ではなさそうなので滞在は可能と思われます。ただ問題は「いつ」母国に帰れるか、です。
まとめ
今回はワクチン接種が進んでいない国で新型コロナウイルスが蔓延する中、国際的なスポーツイベントを開催するとどうなりうるか、を紹介しました。ざっくりですがインドの接種完了率は2.06%(5/3現在)、日本は0.79%(4/29現在)です(Our World in Data
私は今後どのようなペースで日本がワクチン接種を進めていくか知りません。私見ですが、どうしてもオリンピックが開催されるのなら看護師や医師を集めたり他の感染対策をとるより、ワクチンかき集めて関係者全員に接種した方が物理的にも時間的にも効果的だと考えます。
いまだに認可にあたり治験データが集めるのに時間がかかった、とか聞きますが、海外在住の日本人でいち早く接種した人から接種後の副作用などのデータ収集協力をお願いすればもっと早く出来たのでは?と勘ぐってしまいます。少なくとも私の周りに数十人の日本人がワクチン接種を完了していますが、そのような要請を日本政府や厚生労働省などから受けた、という話を一度も聞いたことはありません。なぜ行わないか不思議です。
オリンピックに携わる頭のいい偉い方々、今からでも早急にご検討を。そうでないとイベント開催しても途中で中止になる可能性があるだけでなく、帰国が出来ない参加者を生み出すことにもなりかねません。
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