アメリカで新型コロナに対する2つ目の飲み薬、申請へ

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ファイザー、米国で飲み薬の緊急使用許可を申請

新年を祝うイベントがタイムズスクエアに戻ってくるようです。

New Year’s Eve celebration will return to Times Square with vaccinated crowd

ただしワクチン接種完了証明とIDを提示する必要があるとのこと。医療的観点から接種できない人は72時間以内の陰性証明とマスク着用が義務だそうですが、そんな健康に問題ある方がわざわざ寒い中、危険を冒して人混みに紛れるのでしょうか?

米国で2つ目の飲み薬

日本や米国でCOVID-19感染者が減っている一方で、オランダやドイツなど新たな波が来ている所もあります。こんな中、アメリカでファイザー社は新型コロナウイルスに対する飲み薬(Paxlovid、パクスロビド、錠剤)の緊急使用承認をFDAに求めました。

Pfizer Submits Covid-19 Pill for FDA Authorization

11月頭にファイザーによる治験の結果が公表され、日本語でもニュースになっています。

コロナ第6波に備える “飲み薬”、治療薬の開発はどこまで

念の為、ファイザー社によるPRへのリンクを貼っておきます。

PFIZER’S NOVEL COVID-19 ORAL ANTIVIRAL TREATMENT CANDIDATE REDUCED RISK OF HOSPITALIZATION OR DEATH BY 89% IN INTERIM ANALYSIS OF PHASE 2/3 EPIC-HR STUDY

同様な飲み薬としてはメルク(Merck)社製のモルヌピラビル(molnupiravir)があり、イギリスではすでに承認済みです。アメリカではこれで2つの飲み薬に対する緊急使用許可が申請中であり、恐らく年末までには結果が出るのでは、と予想されています。

2つの薬の違い

アメリカではレムデシビルの使用が入院患者に、そしてモノクローナル抗体の使用が限られた場所で提供されていますが、どちらも比較的高額で医療従事者の手を借りないといけない点で手間がかかります。これに対して言うまでもなく飲み薬は手間がかからず、安価です。

ファイザーの飲み薬は感染の兆候が出た後、5日渡って30錠服用するようです。実際には1日に2回、ファイザーのPF-07321332を2錠、他の抗ウイルス薬であるritonavirを1錠を1回に飲むことになるとされています。上のWSJの記事だとメルク社のものとは効き方が違い、安全に関して心配事がより少ない、と書かれていますがどうでしょうか?

ちょっと気になるので調べてみると、Natureの記事が見つかりました。

COVID antiviral pills: what scientists still want to know

さっと目を通すと、Natureは5つの点から検討しています。

1. 薬はどのくらい有効か?

抗ウイルス剤は効果的に作用するよう感染初期に投与することが多いので、試験でいつ投与されたか、そしてそのタイミングが薬の効果にどのように影響するか、など詳しく調べる必要がある、とのこと。またその薬がコロナウイルスの感染に影響を与えるのかどうか、感染済みの人々に与えると今後の感染を予防出来るか、などの手がかりが求められているようです。

2. 安全か?

薬は被験者に対し十分に許容され、潜在的な副作用は軽微という治験の結果が出ていますが、薬の適用範囲外の患者さんがいるのも事実です。

モルヌピラビル(メルク社製)は、ウイルスの複製中にウイルスの遺伝子に変異を導入することで作用します。この薬剤の代謝物はRNA依存性RNAポリメラーゼと呼ばれるウイルスの酵素と反応し、ウイルスのゲノムに組み込まれ、最終的にはウイルスが生存できなくなるほどのエラーを引き起こす仕組みです。ただある研究によると人のDNAにも変異を起こしかねないという指摘がなされ、5日という短い服用でも注意が必要と指摘しています。

PF-07321332(ファイザー製)は、ウイルスのタンパク質を最終的に機能的な形に加工するのに必要な酵素を阻害することで作用します。この薬は抗ウイルス剤とリトナビルという別の薬を組み合わせたもので、リトナビルは肝臓の酵素がコロナウイルスを無効にする前に抗ウイルス剤を分解するのを防ぐ働きがある、とのこと。ただリトナビルはHIV治療薬であるが他の薬の代謝に影響を与えることがあります。心臓病の治療、免疫系の抑制、痛みの軽減などによく使われる薬を含め幅広い種類の薬と一緒に投与が出来ず、結果的に適用外の患者さんが少なからずいるだろう、という指摘です。もっともこちらも服用期間が短いので、医師は状況をみながら使用するかしないかの判断をするだろうとのことです。

3. 変異種にも効果があるか?

理論上は既知の変異種に効果的であるとのこと。ただ両方の薬とも本当に変異種に有効か示すことが必要だ、とも指摘されてます。またモルヌピラビルは変異を起こすので、新たな脅威となる変異種を産まないか?という質問もありますが、0ではないもののその可能性は非常に低いという見解のようです。

4. 新型コロナウイルスは薬剤耐性を獲得するか?

上の2つの薬が効かなかった人、免疫機能が低下している人などを調べてそのようなことが起こりうるか検討する必要がある、と書かれていました。

5. 誰が新しい薬を手に入れられるか?

メルク社は低中所得国に必要なライセンスを供与し薬を生産出来るようにしたり、豊かな国と比べて安く手に入るようにするとのことです。ただ検査キットが不足している国で、インフルエンザなのにこの薬を与えうることも危惧されているようです。

まとめ

検査で陽性となった場合、まずはこの薬を自分で飲むことができれば安心感につながる一方で、どこかの元大統領のように独り占めして予防的に飲むような人も出てくるように思えてなりません。英文で見る限り日本の話は出てきませんが、高所得国であろう日本は購入するか、特許権を取得してライセンス生産する必要がありそうです。

実際のところ、いくらぐらいで販売されるんでしょうね。

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