2月に入り5試合連続20得点以上
2月に入り、米大学バスケットはカンファレンス内の試合が佳境になりました。3月には恒例のNCAAトーナメント(通称:マッチマッドネス、March Madness)があり、チームとして選出されるために各大学頑張るわけです。各カンファレンス内のトーナメント勝者は自動で選出されますが、トーナメントで優勝出来なくてもシーズン中に頑張ってレギュラーシーズンの勝者だったり、全米ランキングで上位に入ったりしていればat largeの枠で選ばれます。
3月に入ると私もにわかファンとなり(tournament bracketという勝ち抜いていく大学を当てるゲームで勝つため)大学バスケを見るのですが、最近日本語で米大学バスケの話題を見かけるようになりました。
日本のバスケ選手に“カリー級”と米記者絶賛 米大学で30得点「過小評価されている」
はて、どなたでしょうか?富永啓生、という選手だそうです。
前提
恐らくバスケ出身者やコアなバスケファンなら彼の名前を知っているんだと思います。しかし私は、
- 競技バスケ経験なし
- 在米24年目
- 東京オリンピックでも男子バスケ見てない
- Big 10の大学に在籍したこともなければ、近くに住んだことない
のため全く知りませんでした。つまり日本人ながら、彼への感じ方は情報が全くなかったという点でこの辺とアメリカ人と同じのはずです。
全米で注目されうる理由
この感覚は日本在住の方だと理解し辛いと思いますが、冨永選手が在籍するネブラスカ大がBig 10カンファレンスに所属している、ということが注目を浴びる点で大きいです。確かに八村塁選手や渡邊雄太選手が米大学バスケでも活躍したことは知っています。しかし彼らがいたゴンザガ大(West Coast Conference)やジョージワシントン大(Atlantic 10)は一般のアメリカ人がTVで観戦するメジャーカンファレンスではありません。全米ランキングで上がろうとも、NCAAトーナメント以外では彼らの試合って一般的な人には目に触れないんです。
しかしBig 10は違います。伝統もあるし、所属する大学も知名度がある有名所ばかり。さらに競技レベルがD1の中でも高いんです。故にチームが全米ランキングに入ってなくても普通に4大ネットワークでカンファレンス内の試合が放映されるのです。これは非常に大きい。
正直言うとネブラスカ大でもBig 12に所属していたときは今ほど注目を浴びていないはず。一般人の感覚だとやっぱりBig 10、ACC、そしてSECの試合(Pac 10も入らなくないが、東海岸から遠すぎでしかも人気は落ち目)はいつでも目が行きます。
D1の大学でバスケをやっていればその地元ではヒーローです。ましてやネブラスカ大があるリンカーンという市は人口30万程度、他にプロスポーツもなく典型的なカレッジタウンですから大学スポーツには熱狂する土地柄です。(注:そこにはバイクで有名なKawasakiの工場があるので日本人駐在員もいらっしゃるはず)。しかし活躍してBig 10のネットワークで紹介されると話は別、注目は格段に広がり、ネブラスカファン以外の目にも留まることになるのです。ましてやアジア人留学生ならなおさらでしょう。
驚いたのですがお父さんは元日本代表でプロ選手、身長が7フィート(約2m13センチ)あるんですね。ただコーチの言うように冨永選手はお母さんと同じ位の身長のようです。
ネブラスカ大にスカウトされた経緯
動画によるとヘッドコーチは以下のようにコメントしていました。
My former assistant Matt just said you gotta see this kid. He’s as good as shooters I’ve ever seen and showed us highlights of a game over there where he was just reigning threes from all over the places and had no conscience so I fell in love with him right there. My history of going back some of my most successful teams have been when we have shooting all over the floor so that’s what really attracted us to Keisei.
上の動画より
(意訳:元アシスタント(コーチ)のマットがこの子を見なきゃダメだと言うんだ。彼はこれまで見た中で最高のシューターだと、日本での試合のハイライトを見せてくれた。啓生はあらゆるところから3Pシュートを決めまくり、それに対して良心の呵責(躊躇?)もなかったので私は彼を気に入ったよ。私の経験上、あらゆる場所からシュートを決められるチームが出来た時最も成功することが出来たから、そう言った点からも(あらゆる所からシュートを決められる)啓生に惹かれたんだ。)
冨永選手がうまいだけでなく、ヘッドコーチが目指すチームづくりに彼がフィットしていることが伺えます。当たり前ですがネブラスカ大学が、というよりこの人が彼をリクルートし、結果Big 10で戦うことになっています。余談ですが、こちらではコーチが大学を移動するとそのコーチにリクルートされた選手も一緒に転校することはザラです。
ちなみに3:15あたりで、2年前の夏に冨永選手がネブラスカ大を訪問したシーンが紹介されています。彼は体育館に入り、コーチの前でカバンを肩にかけたまま3ポイントをなんと20回連続できめたそうです。実際最後の数回を動画で見れ、最後にコーチが手を広げています。それでコーチが笑みを浮かべながらこう言っています。
I’m like that’s my guy. He’s gonna have a great career.
ネブラスカ大ヘッドコーチ
(彼こそが自分が求めてた選手だ。彼はここですごいキャリアを送るだろう。)
ただ忘れてならないのは、Big 10のネブラスカ大学に入学するための成績や英語の点を冨永選手はもっていたことです。バスケが優秀でも学業がだめで、求められる点の低いところに入学する選手はたくさんいますから。
Big 10カンファレンスで注目された理由
上に書いた通り2月はレギュラーシーズンの最終結果を左右するだけでなく、NCAAトーナメント出場を決める大事な月。2月入るまでネブラスカ大は通算で10勝13敗、カンファレンス内で3勝9敗で4連敗中でした。それまでも冨永選手はコンスタントに試合に出ていてそれなりに結果を出していましたが、2月に入ると既報の通り4試合連続で20点以上を記録、それに呼応するようにチームも3勝1敗と盛り返したのです。
‘Japanese Steph Curry’: Tominaga joy eases Huskers’ struggle
Meet the ‘Japanese Steph Curry’ hyping up crowds in Nebraska
米国ファンのお気に入りの理由
さらに彼の人気を上げるのが、休憩時間や得点のたびに観客やチームメイトを盛り上げ、その存在感でファンを魅了しているところです。こういう所、アメリカ人にウけます(笑)。一番最初の動画でチームメートがこんなことを言っていました。
He has a contagious energy obviously a lot of fans can see that and they feel that. (彼には伝染させるエネルギーがあり、多くのファンがそれを見て感じている。)
チームメイトSam Grieselの言葉
ヘッドコーチがこの言葉に続きます。
When he gets introduced, he gets as big a cheer as anybody. (彼が紹介されると、誰よりも大きな歓声が上がる。)
ヘッドコーチの言葉
そしてもう一度チームメイトのサムが冗談を交えて話します。
(He is ) definitely a fan favorite. He has some fans all around the country. Everyone wants Keisei Tominaga’s jersey. I want one. I need to get one. And I can’t think of a better person for our fan base to embrace like that.((啓生は)間違いなくファンの一番のお気に入りだよ。全米にファンがいるようだ。誰もが啓生のジャージー(注:通常レプリカ)をほしいよ。僕も欲しい、1つ買う必要がある(笑)。ファンにとってそんな思いを抱かせてくれる選手は他にいない。)
チームメイトSam Grieselの言葉
またYahooの記事では、ヘッドコーチが以下のように話をしています。
You see that when he hits those shots, when he gets to the end of the lane and hits those circus shots, you see the bench go crazy for him, you see his teammates out on the floor. It’s just fun to have a guy (who) plays with that much passion and energy.(彼がシュートを打つときやレーンの端まで行ってサーカスの様なシュートを打つとき、ベンチが彼に熱狂しチームメイトがフロアに出てくるのを見れる。あんなに情熱とエネルギーにあふれたプレーをする選手がチームにいるのは本当に楽しい。)
ヘッドコーチの言葉
得点をあげるだけだく、気持ちでもチームメイト、観客を魅了しているようです。非常にいい意味で日本人らしくなく、アメリカ人ファンが好むタイプの気質です。
対メリーランド観戦@home
こういう情報が入れば見ない手はありません。先日FS1というFox系列のTV局での放映だったのでストリーミングで観戦しました。
メリーランドはカンファレンス首位を走るパデューを前の試合で破り、意気揚々と敵地リンカーンに乗り込みました。素人でもメリーランドは体格で圧倒しているのが分かり、ネブラスカは苦しい試合を強いられました。これまで4戦20点以上マークしていた冨永選手には、素人が見てもわかるぐらい激しくチェックされ、3ポイントや他のシュートなどもあまり決まらず厳しい状況でした。
後半に入ってチームは長くリードを許しましたが、最後のキモい所で冨永選手が相手のファールを誘い、全てフリースローを決め同点に持ち込んだ所はさすがでした。またOTに入り最初に長い3ポイントを決めた所は、千両役者の片鱗を多いに見ることができました。最終的に20得点となり、連続試合を5に伸ばしましたしね。
がんばれベアーズ的なチームは見事OTでも逆転で勝利を収め3連勝、今季の成績を14-14のタイに戻しました。見ていない人は以下の動画でご確認を。
NBA?
気の早い日本のマスコミはNBAドラフトの可能性を書いていたりしますが、にわかファンとは言えこちらに長く住み、仕事柄NBAにドラフトされた選手のトレーニングを手伝ったことがある私から見ると、今のままではまだ厳しいかな、というのが正直な所です。NBAなどプロの世界は化け物の住処なんですよ。
ただもう1年大学でプレー出来ますし、これからも色々な面で成長を期待出来ますので可能性はある、と思います。今後も応援していきたいと思います。
次戦は2/25の2時30分、ホームでミネソタ大学との試合です。Big Ten Networkでの放映なのでうちのTVで観戦は出来ませんが、どこかで見ようかと画策しています。
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