第85回マスターズ・トーナメント、夢のような結末
松山選手が優勝したことはすでに日本で報道されているので、アメリカ側からどのように映っていたか振り返りながら報告します。因みに上のアイキャッチ画像は2009年の練習ラウンド中に自分で撮った写真です。
松山選手、マスターズ初制覇おめでとう
4時ごろまで別件の用事があったので、私自身が中継を見始めたのはバック9からでした。マスターズのウェブサイトから拝見しました。松山選手、前半は手堅く伸ばしてリードを広げていましたが、私が見始めたあたりでは得意のアイアンも含めて全てのショットがぶれていて、本当に心配でした。でも13番のパー5ではティーショットで林に打ち込んだと思われたボールが木に当たって戻ってくるという運にも恵まれ、後半唯一のバーディが取れました。勝てる時は運も味方する、ということを実感した瞬間でした。その後もショットにパットに苦しみましたが、どうにか1打差で逃げ切ったのは既報の通りです。
ESPNのスポーツセンターによるハイライト
マスターズの公式サイトから松山選手最終ラウンドの全てのショット
ハラハラドキドキしましたが、最後は感無量でした。それ以外言葉が見つかりません。
CBSによる2021年のマスターズ回顧録
最終日の米国記者の予想は有利でなかった
昨日4打差で松山選手がトーナメントリーダーになり、彼が優勝することを大いに期待する記事を書きました。
ただ不安もかなりあったのも事実です。3日目まで彼はパットが好調でしたが、それがずっと続くかどうかはわかりませんでした。ゴルフを好きな人なら知っているかと思いますが、松山選手の最大の課題はパッティングです。正直、昨日4打のリードがあっても松山選手のパッティングの悪さに勝てると思っていた人はあまり多くありませんでした。まずはCBSスポーツから。
寸評には以下のように書かれていました。
I don’t believe Matsuyama’s hot putting will continue, and I think Schauffele gets a jacket from Dustin Johnson on Sunday evening.(松山選手の好調なパッティングが続くとは思えず、日曜日の夜にはシャウフェレがダスティン・ジョンソンからジャケットを受け取ると思う。)
次はESPNの予想です。
記者の意見を言い合う中で「Who among the top 10 on the leaderboard do you trust the least?(リーダーボードのトップ10の中で最も信頼できないのは誰か?)」という質問があり、その中で一人がこう答えています。
Dare I say Matsuyama?(中略)What worries me most about Matsuyama, though, is his putter. He came into the Masters ranked 166th in strokes gained: putting (-.296 strokes). Clearly, he took advantage of the slower and softer greens after the rain delay and needed only 25 putts in the third round, which was tied with Abraham Ancer for fewest in the field. On Sunday, Augusta National’s greens will be firmer and faster, and pin locations will be much more treacherous. Plus, his nerves will be firing on all cylinders.(あえて言えば松山選手でしょうか。松山選手について最も心配なのは彼のパターです。マスターズに来た時パッティングの獲得ストローク数が166位でした(-.296ストローク)。第3ラウンドのパット数は25個で、これはアブラハム・アンカーと並ぶ最少パット数でしたが、雨天中止後の遅くて柔らかいグリーンを利用したことは明らかでした。日曜日のオーガスタ・ナショナルのグリーンは硬くて速く、ピンの位置もより危険なものになるはずです。さらに、彼の全ての神経が敏感になっていることでしょう。)
その後5人の記者が優勝者を予想しましたが、松山選手を予想したのはわずか2人でした。またゴルフの賭けサイトでも、彼のパッティングの悪さが指摘されていて、他の人が勝つチャンスはまだまだあることを強調していました。
Historically, his putter has been his downfall, as he’s ranked 166th in strokes gained putting on the campaign and was 170th last season. 歴史的に見ても、彼のパターは彼の欠点であり、パター部門でのストローク数で166位、昨シーズンは170位であった。
He’s had a tough time with final rounds, ranking T-116 this season. With his first 54 hole lead at a major and his contemporaries able to fire at flags and be aggressive, he’s not sporting palpable odds to wager on.(彼は今シーズン最終ラウンドで116位タイと苦戦している。メジャーで初めて54ホールをリードし、同世代の選手がフラグを立てて積極的にプレーしている中、彼は(勝つという)明白なオッズを賭けられているわけではない。)
もちろんアメリカ人贔屓なところもありますが、素人目にみてもメジャーで勝てるようなパッティング技術を松山選手が持っているとは思えなかったので、気が気でありませんでした。だからこのことは昨日の時点で分かっていても、あえて書きませんでした。結論から言うと、この不安はかなり当たっていましたからね。
実はTBSの報道がこちらでも流れていた
私はアメリカの実況放送(マスターズのサイトでも放映されているものを視聴していたので、実際はCBSで流れていたもの)を聞いていましたが、かなり日本の状況を伝えるためにTBSでの日本語放送が流れていました。例えば15番パー5の2打目で松山選手はグリーンをオーバーし奥の池に入れてしまうのですが、英語で解説があったあと、東京ではどのように放送されていたでしょうか?というナレーションの後にTBSの報道が紹介されていました。ちなみにこの2打目、解説者(たぶんイギリス発音からニック・ファルド)は打った瞬間に「彼の普段打つアイアンよりかなり(弾道が)低い」と心配していたので、流石だと思いました。
この後も何度かTBSの報道がアメリカ側での報道でも流れたのですが、面白いことに言葉がわかるとは思えないのにこちらの人にも評判が良かったようです。
– The Tokyo broadcast calls are electric.(TBSの放送は刺激的だ)
– That Tokyo broadcast sounds like a shot of life. Need more. ASAP!(東京の放送はまるで人生をかけた一打のようだ。もっと必要だ。大至急!)
– Beyond smart for CBS to carry the Tokyo TV broadcast of Matsuyama. The horror on 15 captured the moment perfectly.(東京のTV放送をCBSが放送したことは非常に賢明だったと思います。15番ホールの恐怖(池にボールが落ちたこと)はその瞬間を完璧に捉えていました。)
– Just switch to the Tokyo broadcast full time please.(東京からの放送にフルタイムで切り替えてください。)
– I could watch the entire Masters with the broadcast from Tokyo. Love the emotion and passion it brings to golf. (私は東京からの放送でもマスターズを全部見れたよ。感情的な表現を私は好きだし、ゴルフに情熱をもたらしてくれるよね。)
– These Tokyo Masters broadcast snippets are gold.(東京からマスターズの放送を断片的に挿入したことは金メダル級に良かったね。)
私個人としてはジム・ナンツの落ち着いたアナウンスとニック・ファルド(言うまでもなく元プロゴルファーでマスターズ覇者)のクイーンズ・イングリッシュによる玄人好みの解説も好きですけどね。
何はともあれ、松山選手マスターズ初制覇、おめでとうございました。上の解説者ニック・ファルドも言っていましたよ。「彼はこれで重圧から解放されるだろう(結果もっと勝つんじゃないか)」って。パッティングにもっと磨きをかけて今後の更なる飛躍を期待したいと思います。私も明日から仕事、頑張ります。
コメント