中外製薬の抗体カクテル療法(カシリビマブ・イムデビマブ)承認に至る過程を検証

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対ウイルス抗体カクテル療法が日本で正式承認

新型コロナに対する新薬承認ニュース

新型コロナウイルス感染も軽症である方を対象とした薬が日本で正式承認されたというニュースを見ました。

ここでは正式承認、というのがミソです。日本語の記事には書いてありませんが英語のニュースを見ると世界初、なのです。アメリカやヨーロッパでは未だにEUA(緊急使用)のみが承認されているだけです。

Coronavirus (COVID-19) Update: FDA Authorizes Monoclonal Antibodies for Treatment of COVID-19

政府やマスコミは世界初の正式承認、というくだりは嫌なのでしょうか。薬を開発したアメリカより先に正式に承認するとは何か困ることでも?ワクチン接種同様に反対者が出るから?分かりません。

承認の過程を検証

この薬を開発したのはアメリカのリジェネロンという製薬会社です。この薬の開発に関する最初の論文は2020年8月にサイエンスに発表されました。

Antibody cocktail to SARS-CoV-2 spike protein prevents rapid mutational escape seen with individual antibodies

上のFDAの文書にある通り、アメリカでEUAは2020年11月にFDAから許可が下りました。当初の投与量は1200 mgで、静脈からの投与のみでした。

日本で承認の根拠となった臨床試験に関する情報は以下の日本語記事を参照しました。海外でのフェーズ3「REGN-COV2067」という治験と国内第1相臨床試験の結果を基に判断されたと書かれています。

厚労省 中外製薬の新型コロナへの「抗体カクテル療法」を特例承認 20日から供給開始

ただいつもそうですが日本語の記事、元文献やデータにリンクが貼ってありません。仕方ないので英語で探すと出てきました。日本のマスコミも以下のYahooぐらいしっかり一次情報を伝えることを希望したいです。

このフェーズ3の臨床試験データは2021年3月23日に開発元からリリースされたようですが、しばらくして査読が終わり、論文として「Cell」に掲載されてました。2021年6月のことです。

The monoclonal antibody combination REGEN-COV protects against SARS-CoV-2 mutational escape in preclinical and human studies

この論文を見て初めて「海外」というのは「アメリカ人」を対象に行われた臨床試験だったことがわかりました。また論文の結果を元にFDAは薬の投与量を当初承認した1200 mgから600 mgに減らすように決定したようです。

FDA Updates Casirivimab and Imdevimab COVID-19 EUA to Smaller Dose

そこで日本人を対象としたもう一方の第1相臨床試験の結果をネットで探したのですが、見つかりませんでした。フェーズ1ということは通常少ない数の健康な日本人を対象に投与し、血中や尿中の薬の濃度の時間推移や半減期などを調べて投与量と(健康な人からみた)安全性を確認しただけかと思いますが。どこかで数字やデータを公開されているのを見たよ、という方がいれば教えて頂きたく存じます。またその後に行われるはずのフェーズ2/3などの治験データもあれば同様です。ちなみに今回日本で正式承認された投与量は600 mgでした。静脈(IV)からでも皮下注射(Sub Q)でも投与出来るみたいですね。

素朴な疑問

この新薬に対し英語で以下のように書いてありました。

REGEN-COV is not authorized for use in patients who are hospitalized due to COVID-19 or require oxygen therapy, or for people currently using chronic oxygen therapy because of an underlying comorbidity who require an increase in baseline oxygen flow rate due to COVID-19. (REGEN-COVは、COVID-19により入院している患者や酸素療法を必要とする患者、あるいは基礎疾患のために慢性的な酸素療法を行っている人で、COVID-19によりベースライン酸素流量の増加を必要とする人への使用は認められていません。)

他の文書を読んでもモノクローナル抗体を高流量酸素や人工呼吸を必要とする重症者に投与すると、治療結果の悪化につながる可能性がある、と書いてありました。これってなぜなんでしょうかね。ただ試験していないとか、薬が貴重で高いから多く投与したくない、ならいいのですが、中和抗体の投与が多いのって身体に宜しくないんでしょうかね。元の論文をきちんと読めば書いてあるかも知れませんが、私自身そこまで読んでいません、悪しからず。こちらも知っている方がいらっしゃったら教えていただけると幸いです。

ともあれ治療薬に選択肢が増えていい兆しだと思います。そもそも感染する人が減るのが理想ですけどね。

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