ワクチン接種後でもマスクいる?いらない?
どうやらmRNAのワクチンは当初考えたよりもはるかに長く効果が持続しそう、という話が昨日上がりました。
COVID-19 vaccine generates immune structures critical for lasting immunity(ワシントン大学セントルイス校医学部発表)
査読済みでNatureに掲載されているようですね。原文へのリンクを貼っておきます。意欲的な方はご覧下さい。
SARS-CoV-2 mRNA vaccines induce persistent human germinal centre responses
これは非常に希望が持てるデータだな、と思いましたが、以下の話はワクチン接種以後の話です。
CDCとWHO、割れた見解
WHOの主張
先週ですが、WHO(世界保健機構)はワクチン接種を完了した人もデルタ株感染拡大を鑑み、引き続きマスク着用を促す声明を出しました。
WHO urges fully vaccinated people to continue to wear masks as delta Covid variant spreads(CNBC)
イスラエルにて新たに感染した人の約半分がファイザーのワクチン接種完了者だったことを踏まえ、その政府が室内ではマスク再着用を義務化したこともありました。
恐らくこのことも視野にいれてのWHOの声明かと想像します。
CDCの主張
ただ上のブログにも書きましたが、アメリカのCDCはどうも感染数抑制より、重病者や被害者の減少に重みをおいているように感じます。
WHO Urges Vaccinated People to Wear Masks; CDC Still Says No Need(サイエンティフィック・アメリカン)
ニューヨーク・タイムズの問い合わせに対し、CDC報道官は現在のガイダンス、つまりワクチン接種を完了していれば殆どの場所で社会的距離を保ったりマスク着用したりする必要ない、というスタンスを今のところ変えないと返答したようです。
上のサイエンティフィック・アメリカンの記者は5月半ばに出された上のガイダンスは感染力の高いデルタ株が優勢になる前に出されたものであり、ワクチン不接種者や一部の接種完了者にリスクを与えかねない、と心配はしています。ただその後に書いてある通り「ワクチン接種者が感染しても稀なことで、通常は重症化しない」ということは今のところ事実です。
アメリカでは社会的距離維持の解除、マスク非着用にしても幸いなことに感染者そのものがあまり増えていない事情もあるでしょう。一方で割合的に言えば総感染者に対しデルタ株による感染者は現在26%程度と推測され、アメリカではイスラエルほど蔓延していない状況でもあります。
Delta variant now accounts for 26% of coronavirus cases in US, CDC estimates
多少の不自由があっても感染予防をとるか、多少の感染を許しても元通りの行動様式を保つか、どちらにせよまだまだ予断は許さない状況です。
ちなみに加州の方策
とは言え慎重になっている自治体もあるので紹介しておきます。
L.A. County urges everyone to wear masks indoors as Delta variant spreads
カルフォルニア州ロスアンゼルス郡の公衆衛生局は公の室内スペースではワクチン接種有無に関わらずマスク着用を強く推奨している、とのことです。ちなみに今日現在12歳以上でワクチン接種完了者の割合は全国平均だと54%、カルフォルニア州ロスアンゼルス郡で58%、ルイジアナ州ラフィエット郡で37%です(下図参照)。どちらも同様に「LA」と省略して書かれることがあるんですけどね。もちろんカルフォルニアは都市名、うちは州名ですが。
ニューヨーク・タイムズのデータより抜粋(6/29/21)
CDCが緩和策をとる他の理由
WSJを読んだら以下の記事が目に止まりました。
Covid-19 Contact Tracers Race Against Delta Variant in the U.S.
パンデミックのピーク時には圧倒されて出来なかったコンタクト・トレーシングが、今では新たな患者を一人一人見つけることを目指せるようになっているとのことです。CDCの調査によれば、2020年6月から10月の間、コンタクト・トレーシングしようにも出来ず、ウイルス感染の減少にあまり役に立たなかったようです。ルイジアナがどこまでやっていたかも分かりませんが、実際問題として自分自身そして複数のアメリカ人友人が州の追跡システムに登録しましたが、感染者に接触した、という警告は一度も来ませんでした。
もしかしたら感染者が少ないうちは発覚しても拡大は防げる、というCDCの算段が現状あるのかも知れません。