サイトアイコン 留職先での独り言@ルイジアナ

【巷の話】大谷選手のこと、米ロースクールを卒業された方のこと

graduation in the US
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ネットを賑わすよもやま話

今日は目新しい時事ネタがないので、気楽に思うことを書きます。下衆な内容で申し訳ありません。ゴシップな話です。

大谷を観客席からデートに誘った方の話

3日ぐらい前に試合会場で大谷選手をデートに誘うバナーを掲げた画像が日本語のネットに上がっていました。

私がパッと見た時、恐らく20代の笑顔のかわいい女性だなぁと思ったのですが、ネットの評価は芳しくなくてその差に驚きました。見慣れていないせいかな、とは思いますけど、そこまで言う?というコメントも見受けられました。私の目がこちらに慣れているせいもありますが、ちょっと可哀そうと感じました。もっともTVカメラに抜かれて映してもらえたので、バナー作成作戦は大成功だと思います。

でも大騒ぎにする話でもないですね、こちらでは普通の微笑ましい光景です。

話題の人のアメリカ大学卒業後の話

アメリカ滞在のためのビザ

新型コロナウイルス以外のトピックで、話題の方が法学のプロフェッショナル・スクールを修了、JDを授与されたということがネットニュースで取り上げられていました。ひとまずご卒業おめでとうございます。

色々な話の説明をとか、皇室にどうの、とかは私がとやかく言う範疇ではないのでここでは触れません。単に一般的な話、ロースクール卒業後、どのようにアメリカに滞在していくか、という話です。ここの主人公が(仮にKさん、とします)普通の方なら今回アメリカで保有するビザはF-1のはずです。いわゆる学生ビザですが、日本から来られる場合は日本のアメリカ大使館で発行され(実際にはパスポートに貼られます)アメリカ入国時に必要なものです。間違いやすいのですが、ビザはアメリカ合法滞在を認めるものではなく、滞在を合法にする書類はF-1の場合大学から発行されるI-20です。Kさんの場合、滞在中日本に帰国されていないようですからI-20とF-1の失効期限は同じ日、つまり卒業の日となります。

留学生が卒業後、合法的にしばらくアメリカ滞在するには一般に二つの方法があります。1つ目はF-1の猶予期間(grace period)で、I-20が切れてから60日間滞在(Gap period)することが出来ます。ただしこの期間働くことは出来ません。2つ目は卒業する最後の学期にI-765という書類を移民局に提出し、卒業後Optional Practical Training(通称OPT)を行える労働許可証(Emplyment Authorization Document、略してEAD)をもらうことで滞在期間を1年延長出来ます。OPTが始まる日は卒業した次の日ではなく、許可証が発行された日(7/26/2022訂正、私の時と違い今は卒業後60日以内で日付を指定出来るそうです。参考サイト)なので実質延長期間は1年より少し短いのが普通ですが、ここではざっくり1年とします。

ニューヨーク州の司法試験

Kさんは卒業したのがニューヨーク州にある大学ですから、ニューヨーク州のBar Exam(=司法試験)を受けます。実は州によって必須の履修科目が微妙に違うらしく、他州の試験を受けたくても受けられない場合があるそうなので、仮にニューヨークとしました。将来的に日系企業が多いニューヨークかカルフォルニアで免状を得る方が合格後、弁護士として働く口はたくさんあるはずです。ニューヨークの司法試験のサイトを調べると、次回の試験は7月27、28日となっていました。

パンデミックで7月のテストは遠隔で行う、と発表されていますね。

いつ頃結果は出るのかな?と思い調べてみると7月に試験を受けた場合、11月後半となっていました。

卒業後からBar Examまで

ここでふと疑問が湧きました。Kさんは11月後半まで帰国せずアメリカに滞在するつもりなのでしょうか?5月に卒業した場合、OPTを申請しなければ合法的に滞在できるのは60日ですが、これだとBar Exam前にアメリカから出国しないといけません。Bar Examまでアメリカに滞在し勉強するのなら、恐らくOPTを申請したことになります。しかしまたここで疑問です。私が知る限りOPTを受領後、90日以内に無給・有給問わず勤務先を決められないと厳密にいえばOPTは無効になります。もっとも違法なことをしない限りこの期間に「職を得た」という確認は行われませんし、ましてやKさんの場合元の勤務場所が法律事務所ですから、恐らくアメリカの知り合いに「無給でいいからとりあえず籍はあることにしておいて」と頼むぐらいは難しいことではないかと思います。

従ってKさんの場合、日本に帰らないのなら卒業前にEADを取り、どこかに仮に籍をおいて実際は司法試験に向けて勉強する、という形を取るんだと推測します。私が持っている認定資格もそうですが、資格がないのにアメリカで外国人が有給の職を得られるとは思いません。雇う側としてもliability(責任、義務)の関係上、資格のない方を顧客前に出すわけにはいきません。

合格後からOPTが終了するまで

仮にすんなり合格した場合を想定します。試験に合格したらもしかしたら有給のインターンに昇格するかも知れません。でも合格が分かるのは11月末ですから、実質Kさんがアメリカで合法的に働けるのは翌年5月末までです。私が知る限り法律(Law)はSTEM(Science, Technology, Engineering, and MathematicsもしくはMedicine)に分類されないので、OPT延長は出来ないはずです。知っている人なら労働ビザである「H-1B」に切り替えればいい、ということを言うかも知れませんが、実はKさんのEADが切れる2022年分のH-1B申請はすでに締め切っています

2022年分の場合2021年3月に電子登録を行い、希望者が規定の数を超えたため抽選に当たった候補者のみが2021年4月1日から申請を行った、とされていました。

結論を言うと、何らかのものすごいコネがない限り2022年5月末にはEADが切れ、その後F-1の猶予期間で最大60日アメリカに滞在(この期間は働けません)したとしても2022年7月末に一度日本に帰国しなければなりません。もしインターンをした米企業が彼を気に入り、Kさんを雇うためにH-1Bを申請しても彼がアメリカに戻って実質働き始めることが出来る最速日は2023年の10月1日(この日にH-1Bが発行)です。

特例を検討する

とは言えアメリカはコネでどうにでもなる国です。例外事項がたくさんあります。

私が考えられるのは、出来るかどうか不確かですが、KさんがF-1で在学中に内定先の会社が2022年度分のH-1Bを2021年4月に申請済みである場合です。抽選になったとしても国会議員が口添えすれば通るのがアメリカの常識です。アメリカの法律事務所が卒業も分からない、ましてや日本で弁護士資格もなく司法試験も受かるかもわからない状況の外人にこのような特例をするとは思えないので、あるとしたら日系の事務所が便宜を図ることでしょうか?この場合、2022年5月末にEADが切れても、H-1B申請が済んでいるので、申請が却下されない限りOPTが延長され継続して働き続けることが出来ます。そして10月1日に晴れてH-1Bが発行されさらに3年、一度切り替えが可能なので6年はH-1Bで働き続けることが出来ます。

2つ目は非営利団体系の組織、例えば大学や国などの研究機関に勤めると毎年割り当てられた数に関係なく、移民局USCISはH-1Bを発行するかも知れません。ただJ.D.はドクターと言ってもPh.D.と違い通常マスター(=修士号)扱いで、H-1Bの適用除外(Exemption)には当てはまりません。しかし医師のM.D.もPh.D.とは区別されてきてマスター扱いだったのですが、全米、特に田舎で医師が不足していて海外からインターンで来た医師(Jビザ)にH-1Bを与える便宜を図っているという話を聞いたことがあります。

つまり政治やお金の力を使えば、J.D.ホルダーのKさんの場合でも同じことが起こりうるかも、と勘繰りたくなるのです。

3つ目は日系企業がKさんのためにすでに駐在するためのビザであるEビザやLビザを申請していることも可能性としてあります。これは必ずしも弁護士の資格は要らず、いつでも申請が可能です。最初は法務担当社員として、合格後は社内弁護士として働くことが恐らく可能かと思います。Kさんに何らかを期待し、便宜を図る日本企業はないこともないでしょうから。

後日注:質問を受けたので追記しておきます。F-1(学生ビザ)、H-1B(一時的な就労ビザ)では配偶者や家族は米国内で就労不可です。

結論

普通に考えればKさんが日本に現在帰らないのは勉強のためもありますが、就職先が確定しておらず一度出国したら戻ってくるあてがない、という可能性もあります。法律上OPT中でも日本に一時帰国、アメリカ再入国も可能ですが、審査官によってはアメリカ再入国の明確な理由を求めることが不思議ではなく、通常はこの期間アメリカを離れることを避けた方が言われています。パンデミック中である点も考えれば、OPTあるなしに関わらず現在日本に一時帰国することは誰であっても得策でないので、アメリカに留まっていることを非難されるのは可哀そうかな、と個人的に考えます。あくまでもそれ以外の説明責任云云かんぬんについては言っていません、悪しからず。

一方で司法試験に合格してもビザを維持しながらその後もアメリカに滞在し続ける、ということは非常に難しいことが、この戯言を通じてなんとなくでも分かっていただけたと思います。Kさんの経歴・実力を冷静に鑑みた場合、残念ながらアメリカのローファームですぐに職を得られる可能性は限りなく低く、日本人による協力な助けが絶対的に必要です。

アメリカ滞在だけを維持したいのならアメリカ人と結婚することが一番の早道で確実ですが、Kさんの選択肢に今それがあるとも思えません。

さてどうなさるのでしょうか。一般市民として普通に興味はあります。在米の方々は良いメモリアルデーの週末をお送り下さい。

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